聞き手・観察:森田/語り:鴨下琳斗/編集:カズヒコ
収録:2026年7月7日、ラゾーナ川崎 ルーファ広場(Apple Store 川崎での体験後、店内で休憩してから場所を移して)
この通し版は、体験直後のインタビュー録音を、読める対話として編集したものです。相づちや言いよどみを整理し、Vision Proの体験から離れた雑談は割愛しました。発言の内容は録音に基づき、編集の際に足したものはありません。抜粋(ハイライト)では拾いきれない全体の流れを追えるように置いています。
画面の印象 ―― 小さい、黒と白
森田:じゃあ、りんとさん、Vision Proの体験で見えたものを教えてください。
鴨下:まず画面。もうちょっとウィンドウを大きくしてほしいなと思って。
森田:小さいって感じだったんだ。色とかは?
鴨下:色はもう、最後の月の背景が頭にこびりついてるので、黒と白ですね。ずっと背景のままだったからさ。
森田:動画を見せてもらった時よりも、最後に自分で操作した時の感じが強いっていう。
鴨下:そうだね。そこが多分、一番脳が動いてる、よかったところでね。映像を見てるだけだったら、あーって口を開けながら見れるけどさ。操作しながら「こういうことが」って探りながらやってた時間だからこそ、頭に残ってるんじゃないかな。
見えていたものを聞かれて
森田:その操作してる時には、どんなものが見えてたんですか。
鴨下:うーーん……(しばらく無言)
森田:なんか、触り心地とか、音とか、画面。
鴨下:画面……なんだろうな……(しばらく無言)
森田:指の動きとか。
鴨下:指の動きで言うんだったら、かなり練習しないと、なかなか大変だったわ。
機械とのあいだの「溝」
森田:周りから見てると、めっちゃ間抜けな人だけどね。指を二本前に突き出して、つまんだり、何にもないところでやってるから。それはあれなの、何。
鴨下:認識が微妙かなって。
森田:馴染まないって感じがした?
鴨下:機械もリントさんも歩み寄らないと、まだ2人の間に溝がある感じかな。
森田:操作感としては、あんまり楽しくなかった?
鴨下:ぶっちゃけそうだね。「すごーい」っていう感じではなかったな。
森田:体だけで操作できるってことに、設計した人はこだわったんだと思うんだけど。
鴨下:技術が追いつけないのかな。このジェスチャーが体に馴染んでないのかもしれないけど、そこのワンクッションがある感じが、まだあったかな。
ペンとキーボードでは、使う脳が違う
鴨下:そのワンクッションがいいっていうのもあるんだけどね。ペンで書くのと、キーボードで打つのは、全然使ってる脳が違うらしいしね。
森田:え、どういうこと?
鴨下:使ってる脳みそが違うらしいので。
森田:この操作のやり方が別の脳の部分を使ってる感じ?
鴨下:そうだね。動きを理解するっていうところかもしれないけど。
視線入力が、子どもの頃の記憶につながる
森田:見たイマーシブ映像はどんな感じだったんですか。
鴨下:これはいまいちよくわかんなかったけど。画質がいいからなのかな、とは思いつつ。いいもんはいいもんなんだなって。
森田:記憶に残ったことはある?
鴨下:目線。最初の目線やるの、すごく懐かしい。
森田:懐かしい?
鴨下:目のレッスンで、散々目で追うことはよくありましたから。
森田:視線入力を以前やったことがあるってこと?
鴨下:入力じゃないけど、視線トラッキングの練習っていうか。顔を動かさず、目の訓練を。指を持って、目のトレーニングですよね。
森田:眼科とかで治療を受けてたって感じ? 子供の頃に。
鴨下:イエス。斜視の関係。
森田:それで良くなったって感じ?
鴨下:そうね。
キャリブレーションは、五回目でようやく
森田:何回やったんだっけ。
鴨下:3回くらい。
森田:3回失敗して、4回目も失敗した。偉い人が来てもダメで。それで、眼鏡に目が止まって、「メガネ使ってますか」「お借りしてもいいですか」って。もっと偉い人が出てきて、もう一回やった。それでできたんじゃなかった?
鴨下:森田さんに負けたのか。
森田:機械を交換して、メガネの度数を調べて、レンズを入れてもらったら、いった。
鴨下:最初の機械だと、やっぱりボケてるところがあったから。ボケがなくなった。ピントが合うようにはなったかな。
店員たちの接客を「盗む」
森田:担当のお姉さん、どうでしたか。
鴨下:いいんじゃない。「日本語上手」って思った。
森田:最後にラスボスみたいな人が来たよね。
鴨下:もっと偉い人が4、5人来たね。
森田:それ、どう思いました? 観察する余裕はあった?
鴨下:見てた。職場で活かせるところがあったら、盗もうかなと思いながら。私、接客やってるから。
森田:接客の仕方ってこと? どうだった、接客。
鴨下:「さすが、さすがやな」と思って。
森田:福祉だから、人を見てるんだね。
鴨下:当然ですよ。
提供する側と、体験する側の温度差
森田:提供する側と、やってる側の温度差を感じたね。提供する側は「すごいもの見せてやろう」と思ってる。やってる方は、自分が操作できるのが面白い。一番モチベーション高かったのは、キャリブレーションがうまくいかないってところで。全スタッフが「通らない? あってはならぬことだ」って燃えてた。
鴨下:社員教育のあれだね。
森田:リントさんは後半の方が面白かったと思うわけ。でも周りの人たちは、後半はもう飽きちゃってる。できて当たり前だから。体験してる方からすると、自分で操作ができるってことが一番面白いのにね。
鴨下:(笑)そうだね。
慌てない人
森田:何も慌てないよね。周りの店員の対応もすごい。自分たちで何とかしてる人に声をかけ続けるって、なかなかできないんですよ。
鴨下:まあねー。慌てなかったね。
森田:ビジョンプロ自体はどうでしたか。
鴨下:60万かぁ。
森田:そっちが先に来た。(笑)体験してみて、期待と違ってた?
鴨下:期待通りというか、「すごいものを出してくれるんだろうな」と思って待ってたら、期待通りのすごいものを出してくれたから。
「半分、信じてない」
森田:キャリブレーションがうまくいかなかったのは、がっかり感?
鴨下:そうですね。私のメガネ、プリズム入ってるから。事前アンケートで「プリズム入ってる」に入れると、キャンセルボタンに誘導されたから。もともと体験できない人側に片足突っ込んでる、と思ってた。半分ダメ元で来たわけだから。「難しいっすね」って言われても、「分かりました」って言って帰る、気合で来た感じかな。
森田:「電話すればOKになるよ」って森田は言ったじゃん。それでも信じきらない部分はどこなのかな。
鴨下:一応、そういう可能性も踏まえてきた。私の性格なところだと思う。最悪の場合を想定してきてる。
森田:これで本当にApple信じて裏切られたら、めっちゃ落ち込むじゃん。
鴨下:半分、信じてないんだと思うんだけどね、ある意味。
森田:「所詮は日本企業だし」って思うところあるよね。
鴨下:そういう考え方じゃないけど、ある程度、とりあえず様子見というか。そういう考え方なのは、あるよね、私は。なんでも。
操作体系は「昔のまま」
森田:見た前と後では、変わった?
鴨下:技術の進化はすごいなぁ、映像綺麗だなぁ、っていうぐらい。
森田:操作体系については「昔のままかよ」って感じ?
鴨下:そうねー。もうちょっと直感的がいい。
森田:森田もそれは思った。掴んだら掴めちゃう、離すとビヨーンと戻る、みたいな。自分の好きなように動いたら、フィードバックが返ってくるみたいな。
鴨下:そんな感じだね。
それでも、いいもんはいいもん
森田:買いたいとは思わなかった?
鴨下:そういう目線で見てなかったかもしれないけど。タダでできるんだったら、タダでやりたーいと思ってます。
森田:じゃあ、ビジョンプロは特に印象なかったんだね。
鴨下:期待通りって。懐かしいなって。いいやつだ。いいやつって。
森田:「懐かしいな」っていうのは意外な感想だね。他に何か見えたものはありますか?
鴨下:俺の話はそんなもんじゃない?
森田:わかりました。じゃあ、以上で終わりです。
編集について:約45分の録音から、Vision Pro体験に関わる対話を抜き出して読める順に整えました。体験から離れた雑談(小売のレジ無人化やAR/VRの一般論など)、および収録後半の身体的な出来事に関するやりとりは、本人のプライバシーに配慮して割愛しています。斜視・視線トレーニングの箇所は、視線入力体験と本質的に結びついているため残しましたが、公開にあたっては本人確認を前提とします。