鴨下琳斗さんの観戦記録〜ワールドトライアスロンパラシリーズ横浜2025

ワークショップの参加者

観察:カズヒコ・チャッピー・鴨下琳斗 / 言葉:カズヒコ

1. ワークショップから始まった取材

雨の降る中、山下公園周辺で開催された「ワールドトライアスロンパラシリーズ横浜2025」を観戦しました。パラスポーツの大会を見るのは初めてで、さまざまな新しい発見がありました。

前日の夜には、取材プログラムに向けたワークショップもありました。テーマは「取材の準備について」でしたが、正直なところ、内容はあまり頭に入ってきませんでした。これまで取材をしたことがなかったので実感がわかなかったのかもしれません。パラトライアスロンの取材にあたり、障害のある当事者の声をもっと知りたいという思いが湧きましたが、これまで取材の経験はなく、どこまで自分にできるか不安もありました。

2. 会場に着いても、選手が見えない

大会当日は、朝6時15分にホテル前に集合し観戦ポイントへ移動することになっていましたが、会場は想像以上に状況がわかりにくく、スピーカーでの案内もどこでも聞こえるわけではなく、さらに障害を抱えたグループでは移動も困難でした。

ゲートごとに立っているボランティアスタッフにあちこちで相談し、広い会場の中を移動しながら観戦できる場所を探しましたが、競技開始のサイレンが鳴っても選手が見える場所には辿り着くことができませんでした。

3. 車椅子の目線から見えたもの

自分はディスレクシア(グラフィックとしてのテキストの読み書きだけができない障害)があり、観戦中はAirPods Proの通知の読み上げ機能を使って取材情報のチャットのやり取りなどを確認していましたが、事前に地図で確認したコースも、現地のマップや案内表示がほとんどわからないため場所を確認するだけで一苦労でした。車椅子での移動も大変で、山下公園内に設けられた観戦エリアは段差で囲まれてる上にデコボコな傾斜した芝生が多く、みんなで力を合わせてもクリアに手間のかかるルートも度々ありました。

一緒に参加したグループの中には車椅子の子どもが何人かいて、雨の中びしょ濡れになりながらそれでも楽しそうに観戦してる姿を見て「えらいな」と感じました。ただ、実際に現地で観戦するとなると課題もありました。沿道には柵にスポンサーの幕が張られていて、車椅子の高さからは選手の姿を見ることができなかったのです。一方で、立って歩ける「こどもスポーツ記者」たちはその柵の上からカメラを構え、間近に選手を捉えていたのが対照的でした。この状況を見て、大会側の配慮が足りないと感じました。車椅子で雨の中でも観戦に来る可能性を、そもそも想定していなかったのではないかと感じます。(晴れていても車椅子の高さからはコースは見えません)

4. ようやく始まったパラトライアスロン観戦

さて、肝心の観戦本番です。あいにくの天候でしたが、パラトライアスロンのレースを初めて間近で見ることができて、とても楽しめました。

印象に残ったのは、大きなタンデム自転車でした。車椅子は見慣れていて、義足の選手も映像などで見たことがあったのですが、視覚障害のある選手が前後に2人で乗って走るタンデムバイクの迫力は、それ以上に強く印象に残りました。ハンドサイクルという手で漕ぐタイプの自転車も見ましたが、普通の車椅子との違いがはっきりとはわからず、「長距離を走るなら、ハンドサイクルの方が効率がいいのかもしれない」と考えたりしました。

一方で、水泳のパートは観戦エリアから見えなかったため、全体の流れの中でどういう泳ぎが行われていたのかは分かりませんでした。

バイクへのトランジションの側のゴール地点には大型ビジョンや観戦席も用意されていましたが、雨の中そこに座っている人は少なく、沿道に立って応援している人たちの方が印象的でした。国旗を掲げていたり、ホワイトボードにメッセージを書いて掲げていたりと、それぞれの方法で選手たちに声援を送っていました。決まった選手を応援しているグループが多く、選手が通過すると次のエリアへ移動していきました。

5. 「パラスポーツ」の多様さ

見た目だけでは障害の有無がわからない選手も多く出場しており、「パラ」という言葉から想像していた印象とは少し違っていたことにも気づかされました。「片麻痺の人なのかな?」と想像しながら見ていました。障害のあり方は本当にさまざまで、障害の見えにくさや多様さを可視化しきれない現実も感じました。

6. 競うより、支える側へ

選手たちはかっこよかったけれど、正直なところ、競技としてタイムや順位を追うことにはあまり魅力を感じませんでした。もともと結果を競うスポーツの観戦(プロ野球やサッカーなど)に関心がなく、自分が同じように競い合う姿も考えられませんでした。

観戦にお誘いいただいたパラフォトの撮影スタッフや記者の方々の様子を見て、「事前の下調べってやっぱり大事なんだ」と学ぶ機会になりましたが、自分が記者やカメラマンになる姿も想像できませんでした。

それでも、現地に足を運んだことで「自分も何か関わってみたい」という気持ちは湧きました。

泳ぎが得意なので、水辺で支えるスタッフとして、例えばライフガードやハンドラーのような役割で大会を支える立場で関わってみたいと思いました。やはり自分にとって「水の中」は特別で心地よい場所です。